Ice Blue Sweet 本文サンプル@



   Strawberry Kiss(岳静)




 部活の終わった岳人先輩と合流して帰路についた私の頭上に、ぽっかりと白く輝く月が浮かんでいる。
凍てついた空気を白く煙らせながら今日の出来事を楽しそうに話す先輩を横に、私はいつ今日の罰ゲームを切りだされるのか、内心ドキドキしていた。
 ――岳人先輩の名前を呼び捨てにできなかったらキス。
 この罰ゲームが始まってから一月以上経つけれど、未だに私は“先輩”を外すことができていない。
 だから、下校時に人気の少ない路地で罰ゲームを受けることは、もはや私の日課になっていた。
 最初は言ったその時にキスってことだったけど、人前では勘弁してくださいって頼みこんだら、渋々ながらも一日の終りにその日の分をまとめてするってことで妥協してくれたのよね。――それでも十分恥ずかしいんだけど。
 と、そんなことをとりとめもなく考えているうちに、ふと頬のあたりに先輩の唇の感触を思い出して、私は顔が熱くなるのを感じた。毎日のようにキスされているのに、その感触に未だ慣れることはなかった。気恥ずかしさに思わず両手で頬を押さえてしまう。
「……か、静! 聞いてんのか?」
「ひゃっ」
 突然ばしっと勢いよく肩を叩かれて、私は小さく飛び上がった。
「やっぱりぼーっとしてたな」
 苦笑を浮かべながら私の顔を覗きこむ先輩に脳裏に浮かべていた記憶が重なって、胸の鼓動が急激に速くなる。
「す、すみません」
 ぶんぶんと頭を縦に振りながら、必死に頭を支配しているイメージを振り払う。
 うう、絶対顔が真っ赤になってるよ。恥ずかしい……。
「何だよ、変な奴だな」
 恥ずかしさに顔を上げられない私の耳に先輩の声が届く。
「まあ、いいや。今日の罰ゲーム、させてもらうぜ。ちょうど周りに誰もいねえし、いいよな?」
「……はい」
 俯いたまま小さく頷くと、先輩の手が私の肩に掛けられた。緊張に体が強張る。
「顔、上げろよ」
 先輩に言われるがまま、私は目を瞑ったまま顔を上げた。先輩の顔がゆっくりと近づいてくるのが気配で分かる。
「今日は三回言ったから、三回な」
 囁く先輩の吐息が頬にあたると、私の体にかすかな震えが走った。寒さからくる震えとは違う、体の奥が熱くなるような感覚。
 人気のない夜道は、遠くの方から車の音がかすかに聞こえてくるだけで、しんと静まり返っている。
 自分の鼓動の音だけがやけに大きく響く中で、私は顔に全神経を集中させていた――が、待てども待てども先輩の唇が届く気配がない。
「…………?」







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