「アンジェリークではありませんか。そんなに急いでどうしました」

 やっと探し当てた。
 もうすぐパーティが始まろうとしているぎりぎりで、アンジェリークはマティアスを見つけ出した。
 息を切らしている彼女に、マティアスは目を瞠る。

「何かカルディナの生徒がやらかしたのですか?」

「いえ・・・あの、マティアスさんは、ダンスなさらないんですか?」

「私が?」

 虚を衝かれて言葉を失うマティアスに、アンジェリークは重ねて言った。

「お願いです! 私とダンス、踊ってください!」

 慌てて走ってきたから、息が切れている。
 劇場裏手の庭にたたずんでいたマティアスを見つけられたのは、奇跡かもしれない。
 散々会場内を走り回ったので、アンジェリークの足には履きなれないサンダルでまめがいくつも潰れていた。
 それとアンジェリークの顔を見比べたマティアスは、見に付けていたショールを彼女の肩にかける。

「そんなに私を探してくれていたのですか」

「はい、どうしてもマティアスさんをお誘いしたくて」

「そうですか」

 マティアスはそううなずくと、何を思ったのかアンジェリークを抱えあげた。

「マティアスさん!?」

「せっかくのお誘いです。受けぬわけには参りません。そなたの望むとおり、お相手を務めましょう」

 ですが、と真剣な表情を浮かべたマティアスは、静かにアンジェリークを見下ろす。
 どきりとアンジェリークの鼓動が跳ねた。

「ダンスホールまではこのままで・・・良いですね」

「はい・・・」

 とっくにまめのことがばれていたことを恥ずかしく思いながらも、アンジェリークは嬉しそうにはにかみながらうなずいた。






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