4
両校挙げてのダンスパーティ。 ニクスの発案であるこのパーティは、何とウォードンにある劇場を貸しきって行なわれる。 最初は抵抗感を見せる生徒もいたものの――それはたいていカルディナ側の生徒であったが――アンジェリークたち実行委員の熱心な働きかけのおかげで、反対意見はなくなっていった。 互いの相手を見つけるために、カルディナとメルローズの生徒の交流会が何度か設けられ、無事に全員がパートナーを決められた。 両校ともに華やいだ空気の中、準備が進められ――――当日に至っている。 「良かった・・・」 ダンスホールに集まった正装姿の生徒たちを前に、準備委員のアンジェリークはほっと息をついた。 ずっと忙しい日が続いていたが、無事に当日を迎えられたことが本当に嬉しい。 「アンジェリーク」 そんな彼女に声をかけてきたのは、メルローズ女学院の学校長だった。 「メルローズの代表として、今日まで良く頑張ってくれました。やっぱりあなたにお願いしたのは正解でした」 「そんな・・・。ありがとうございます」 素直に頭を下げるアンジェリークを見る学校長は、心底嬉しそうに微笑んだ。 「さあ、仕事はいったん置いておくといいわ。あなたもダンスパーティ、楽しんでいらっしゃい」 「えっ?」 「素敵なドレス姿よ。あなただって楽しむべきだわ。そうでしょう?」 学校長は穏やかにアンジェリークの背中を押す。 「行ってらっしゃい。気になるお相手に思い切って声をかけていらっしゃいな」 「は、はい! ありがとうございます」 アンジェリークは一礼すると、ダンスホールに駆けていった。 |
そういえば、誰も相手がいなかったわ! |
あの方はお暇かしら・・・。 |
入り口にいるあの人に、声をかけよう! |
きゃあっ! つまずいてしまった! |
あの人はどこにいるんだろう・・・。 |
あっ! ダンスホールの壁にいたわ! |
もうすぐダンスが始まってしまうのに・・・! |
あら。あそこに立っているのは。 |
あの人にお願いしてみよう! |
全く、どこへ行ったのかしら。 |