両校挙げてのダンスパーティ。

 ニクスの発案であるこのパーティは、何とウォードンにある劇場を貸しきって行なわれる。

 最初は抵抗感を見せる生徒もいたものの――それはたいていカルディナ側の生徒であったが――アンジェリークたち実行委員の熱心な働きかけのおかげで、反対意見はなくなっていった。

 互いの相手を見つけるために、カルディナとメルローズの生徒の交流会が何度か設けられ、無事に全員がパートナーを決められた。

 両校ともに華やいだ空気の中、準備が進められ――――当日に至っている。

「良かった・・・」

 ダンスホールに集まった正装姿の生徒たちを前に、準備委員のアンジェリークはほっと息をついた。

 ずっと忙しい日が続いていたが、無事に当日を迎えられたことが本当に嬉しい。

「アンジェリーク」

 そんな彼女に声をかけてきたのは、メルローズ女学院の学校長だった。

「メルローズの代表として、今日まで良く頑張ってくれました。やっぱりあなたにお願いしたのは正解でした」

「そんな・・・。ありがとうございます」

 素直に頭を下げるアンジェリークを見る学校長は、心底嬉しそうに微笑んだ。

「さあ、仕事はいったん置いておくといいわ。あなたもダンスパーティ、楽しんでいらっしゃい」

「えっ?」

「素敵なドレス姿よ。あなただって楽しむべきだわ。そうでしょう?」

 学校長は穏やかにアンジェリークの背中を押す。

「行ってらっしゃい。気になるお相手に思い切って声をかけていらっしゃいな」

「は、はい! ありがとうございます」

 アンジェリークは一礼すると、ダンスホールに駆けていった。




そういえば、誰も相手がいなかったわ!

あの方はお暇かしら・・・。

入り口にいるあの人に、声をかけよう!

きゃあっ! つまずいてしまった!

あの人はどこにいるんだろう・・・。

あっ! ダンスホールの壁にいたわ!

もうすぐダンスが始まってしまうのに・・・!

あら。あそこに立っているのは。

あの人にお願いしてみよう!

全く、どこへ行ったのかしら。





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