案内されて、ようやくたどり着いた生徒会室。
 ノックをしようと手を伸ばしたところで、いきなり中から声が飛んできた。

「だから、私は交流会なんて反対です!!」

「えっ!?」

 思わず驚いた声が出てしまい、慌てて口元を押さえるが、もう遅い。
 足音が中からこちらに近づいてきたかと思うと、勝手にドアが開いた。

「お前がメルローズ女学院の代表か?」

 顔を覗かせたのは、目にも鮮やかな赤毛の少年だった。

「あ、はい・・・。アンジェリークです」

「そうか。オレはレイン。高等部の生徒会長だ」

「初めまして」

 ぺこりと頭を下げると、「よろしく」という声が返ってきた。
 それにしても、さっきの声は何だったのだろう。
 レインのものではないことだけは確かだ。
 アンジェリークが首をかしげていると、もう一人中から顔を出した。

「あなたがアンジェリークですか。本当に厄介なことです」

「エレン!」

 レインはたしなめるように少年を睨んだが、眼鏡の少年のほうはふんと鼻を鳴らした。

「大体交流会なんて、意味があるんですか。時間の無駄だと思いますがね」

「エレン。やってみる前から結論を急ぐのは良くないぞ」

「余計なお世話です」

 そういいつつも、彼は中へ戻ると、自分の椅子へ腰を下ろす。

「仕方ありません。話だけは聞きましょう」

「全く・・・。悪いな。こいつはエレンフリート。中等部の生徒会長だ」

 レインはアンジェリークを中へ入れると、二人の前に座らせた。

「よし、じゃあ始めよう。メルローズ女学院とカルディナ大学付属校との交流会の話だな」

「はい」

 アンジェリークは持参した、ニクス直筆の書類を机の上に出した。

「理事長であるニクスさんの、交流会案だそうです。そちらの理事長のマティアスさんもすでに企画には目を通し、了承なさっているそうですので、この計画で進めるよう仰せつかっています」

「ふうん。どれどれ」

 資料に目を通していたレインとエレンフリートは、読み進めていくうちに、険しい表情になっていった。

「・・・・・・これをやるのか?」

「え? ええ、そういうことらしいです」

 何だろう、この微妙な反応は。

「お前、この企画書、読んだのか?」

「いえ、まだですけど」

「・・・・・・読んでみろ」

 アンジェリークは多くを語らぬレインから書類を受け取ると、素早くそれを読み上げる。

「交流会企画、一夜限りのダンスパーティ。お互い相手を見つけて素敵なひと時を過ごしましょう・・・・・・ええ!!?」

 ダンスパーティ!?
 思わずレインとエレンフリートを見ると、二人とも渋い顔をしていた。

「レイン会長、本当にこれをやるんですか?」

「やらないわけにいかないだろう。両校の理事の取り決めだぞ」

 二人が同時にため息をつく。
 気が進まない、というのがありありと顔に浮かんでいた。

「こう言っては何ですが、メルローズ女学院の理事はおかしいんじゃないですか。こんな企画を立ててきて・・・」

「いや、それを言ったら了承したうちの理事長だって・・・」

「素敵な企画ですね!」

「えっ!?」

 意外なアンジェリークの反応に、レインとエレンフリートは同時に彼女を見た。
 キラキラしている。
 目が輝いている。
 アンジェリークを見た二人の感想はこれだった。

「素敵・・・。ダンスパーティなんて、女学院では出来ないもの」

 それはそうだろう。女の子しかいないのだから。
 うっとりしていたアンジェリークは、呆然とする二人に拳を作ってみせた。

「早速お知らせを作らないと! ダンスの相手を決めなければならないし、ダンスに自信がない子にはダンス教室を開かなくてはいけないですよね」

「え? あ、ああ、そうだな」

「当日までの計画を立てましょう。せっかくの交流会ですもの、絶対成功させましょうね!!」

 気合の入ったアンジェリークに、あれだけ渋っていたエレンフリートでさえ、

「わ、分かりました・・・」

 と素直に了承していた。

「とっても楽しみです。頑張りましょうね!」

 やる気満々なアンジェリークに対して、生徒会長二人は引きずられるようにうなずくことしか出来なかった。







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