「何てこと・・・」 呆然とした面持ちのエンジュは、信じられないという思いいっぱいにそう呟いた。 手には流行の少女向け雑誌が握られている。可愛らしい字体で、「気になるあの人との相性が分かる!」と言う見出しが、すべての原因だった。 「私とレオナード様の相性が、最悪・・・」 間違いではないかとよくよく調べてみるが、星座と血液型を用いた相性占いは、見事に二人の仲が最悪であることを示していた。 何度も確認して、ようやく諦めたようにエンジュはがくりと肩を落とした。 寝る前に軽い気持ちで見始めたのに、こんなに気持ちが沈むとは思わなかった。 レオナードとの相性が悪かったことも勿論、相性が悪かったことでこんなに落ち込んでいる自分がいるということに、衝撃を受けた。 最近特に思う。 ――――私は、レオナード様が好きなんだわ。 今までは、いい年して仕方ない人だと思っていた。それが、世話を焼くたびにどんどん惹かれていって、気がついたときにはもうすっかり心を奪われていた。 「・・・はあ」 こんな気持ちのままでは眠れない。エンジュはカーディガンを羽織ると、寝ているタンタンを起こさないようにそっと部屋を抜け出した。 夜の景色は、昼間見ているものとは違った印象を与える。静かな小道を歩いていくエンジュは、考え事をしていたからか、気がつくと守護聖の屋敷の辺りまで来ていた。 いくらレオナード様のことを考えていたからって・・・。 急に恥ずかしくなって、エンジュはきびすを返した。 誰かに見られては不審に思われてしまう。 そっと、そーっと・・・。 「エンジュ?」 「きゃっ!?」 不意に後ろから声を掛けられて、文字通りエンジュは心臓が口から飛び出るかと思った。 跳ね上がった鼓動そのままに振り返ると、予想していた通りの人物が立っていた。 「お前、どうしてこんなところに」 あちゃあ・・・。 頭を抱えたくなるのを抑えながら、何でこんなに都合悪いときに、と思わず思ってしまう。 エンジュは観念して頭を下げた。 「あ、いえ・・・ちょっとお散歩に・・・。そういうレオナード様こそ」 「ん? ああ、ちょっとな」 面倒くさそうにしているのは、いつものことだ。 |