突然目の前でフラッシュがたかれて、アンジェリークは悲鳴を上げた。

「きゃっ!」

「よし。不法侵入者はばっちり押さえたぜ!」

 目がちかちかする彼女の目の前には、いつしかカメラを構えた男子生徒が立っていた。

「その制服、メルローズ女学院だろ? そんなところのお嬢様が、一体この学校に何の用だい?」

 面食らうアンジェリークをからかうような口調。
 初対面でいきなりこの仕打ちはないだろう。
 さすがに腹が立ったアンジェリークは、ようやくその男子生徒を睨んだ。

「私はアンジェリークです。メルローズ女学院の代表として、この学校の生徒会長さんに用事があるんです。あなたこそいきなり、何なの?」

 まさか反論されるとは思わなかったのか、その男子生徒は目を見開いた。
 と、タイミングを図ったように、二人に声が飛んできた。

「ロシュ!」

「げっ」

 その声を聞いたとたん、男子生徒――――ロシュと呼ばれた彼は、思い切り顔をしかめた。
 アンジェリークが振り返ると、そこには教師と思われる男性がいた。
 その顔には見覚えがあった。

「全く、彼女に失礼なことをしたんじゃないだろうね?」

「ベルナール兄さん!」

「えっ!」

 ロシュはアンジェリークの発言にさらに度肝を抜かれた。

「ベルナールの知り合いか?」

「ベルナール『先生』だろ? 何度注意したら分かるんだい」

「そんなこといいだろっ。それより、こいつ、妹なのか?」

 こいつ、と指を差されたアンジェリークは、ロシュの手をぱちんと叩いた。

「人を指差すなんて失礼だわ。まして初対面の相手に」

「そういうことだよ、ロシュ」

 あきれたようにベルナールは肩をすくめる。

「彼女とは親戚同士なのさ。アンジェ、ロシュの失礼は今に始まったことじゃないけれど、気を悪くさせてしまって悪かったね」

 ロシュに代わってベルナールが頭を下げると、アンジェリークはぶんぶんと首を振る。

「良いんです。それより兄さん、私、生徒会室へ行きたいのだけれど、どこから入ったらいいかしら?」

「ああ。交流会の代表者って、君だったのか。聞いているよ。生徒会室は職員室の隣だから、案内してあげよう」

 ベルナールの後に従って歩いていくアンジェリークに、はっと我に返ったロシュは慌てて声をかける。

「待った! オレも一緒に行く!」

「一体どういう風の吹き回しだい? 明日は雪かな」

「うるさい! ほら、さっさと生徒会室へ行くぜ」

 ロシュは先頭に立って歩き出した。

「? あ、ありがとう・・・」

 急に親切になった彼に面食らいながら、アンジェリークは二人に案内されて生徒会室へ急いだ。






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