ダンスパーティ
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「交流会・・・ですか?」 理事長室に呼び出されたアンジェリークは、ソファに腰をかけながら目を丸くした。 メルローズ女学院の午後は、いつものように穏やかに過ぎている。 その様子と同じような微笑を浮かべているのは、この女学院の理事長のニクスだった。 彼はアンジェリークの向かいに座り、ゆっくりとうなずいた。 「ええ。このアルカディアには、メルローズ女学院と、カルディナ大学、それに付属する学校が主な教育施設です。今までは場所も違うためにかかわりがなかったのですが」 そこまで言ってニクスは、彼の斜め前に座る翡翠色の髪の毛が綺麗な男性に視線を送る。 アンジェリークにとっては、初めて見る顔だ。 その男性はアンジェリークと目が合ったとたん、優しく目を細めた。 「初めまして。私はカルディナ大学とその付属機関の理事を務めております、マティアスと申します。以後、お見知りおきを」 「あっ、アンジェリークです」 慌てて頭を下げると、マティアスはくすりと笑みをこぼした。 「彼の発案で、このメルローズ女学院とカルディナ大学付属校との交流会を開こうという案が出ているのですよ」 「同じ年代の人とより多くかかわりを持つことは、あなた方に必要なことだと思うのです」 いかがですか、と問われたアンジェリークは、単純に自分の感想を述べた。 「はい。とても素晴らしいことだと思います」 「そうですか。では、この交流会の本校の代表はあなたにお願いしましょう」 「えっ!?」 驚きで固まるアンジェリークに、同席していた学校長が嬉しそうに微笑んだ。 「アンジェリーク、この大役は誰もが務まることではありません。ニクスさんは、日ごろの行いを見て、あなたを代表に選んだんですよ」 名誉あることです、と付け加える。 「そんな大役・・・」 務まるかしら、と考え込むアンジェリークの反応を想像していたのか、ニクスは彼女の言葉を最後まで聞かなかった。 「ノーブレス・オブリージュ。あなたには責任者としての資質があります。やっていただけませんか?」 「・・・・・・」 はっきりそう言い切られたので、アンジェリークはしばし悩んだものの、最後にははっきりうなずいていた。 「そのお役目、頑張らせていただきます!」 その言葉に、ニクスを始め、マティアス、学校長はほっとしたように息をつき、頼もしそうにアンジェリークを眺めていた。 「ええと、この校舎・・・で良いはずよね」 渡された地図を見ながら、アンジェリークは始めてカルディナ大学付属高校に足を踏み入れた。 ニクスたちから呼び出された翌日。 放課後になってから、アンジェリークは早速打ち合わせのために、ウォードンまでやってきていた。 カルディナ大学には、付属の高校と中学がそれぞれ併設されている。 一貫教育で才能ある若者を育てよう、という理念の下、多くの学生を受け入れているこの学校に、アンジェリークは今まであまりかかわりがなかった。 親戚のお兄さんはこの学校出身だったことくらいしかつながりがなく、当然今日も初めて校舎に入る。 「困ったわ・・・」 校舎が広いというのは、つまりまずどこへ行けば良いのかわからないということだ。 入り口すら見つけられないでいるアンジェリークは、きょろきょろと辺りを見回した。 すると、角の向こうでこの学校の関係者と思われる人物を発見した。 「迷っている暇はないわ!」 アンジェリークは思い切って声をかけた。 「あの・・・」 |
購買のお兄さんと用務員さんに声をかける |
制服姿の生徒に声をかけようとする |
先生と思われる人物に声をかけようとする |