聖なる夜





 ――――全然集中できなかったわ。

 はあ、とため息をつきながら、アンジェリークは校舎から寮へと歩いていた。

 結局、あれからどれだけ気持ちを切り替えようと思っても、全然思うようにいかず、頭が真っ白になったまま一日が過ぎ去ってしまった。

「ハンナがあんなことを言うからだわ」

 カルディナの人が来ている。
 もしかしたら、思い人が来ているかもしれない。
 そんなことを気にし出したら、止まらなくなってしまった。

「・・・本当に、来ているのかしら」

 この校舎に。
 もしかして気が付いていないだけで、同じ建物にいるのかもしれない。

 ダンスパーティのときに知り合いになったとはいえ、アンジェリークは寮暮らしだし、メルローズ女学院のあるリースは、カルディナと少し離れている。
 会う機会も、実はあのダンスパーティ以降全くなかったのだ。

「どこかに、いるかもしれないわ・・・」

 もういないかもしれない。
 しかし、いるかもしれないこの状況で、おとなしく自分の部屋に帰る気にはなれなかった。

「少し、歩いてみましょう」

 散歩がてら。
 そんな理由を作りながら、アンジェリークはくるりと向きを変えると、歩き出した。






来客用の応接室へ行く
音楽室へ行く
エントランスへ行く
食堂へ行く






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