聖なる夜
2
――――全然集中できなかったわ。 はあ、とため息をつきながら、アンジェリークは校舎から寮へと歩いていた。 結局、あれからどれだけ気持ちを切り替えようと思っても、全然思うようにいかず、頭が真っ白になったまま一日が過ぎ去ってしまった。 「ハンナがあんなことを言うからだわ」 カルディナの人が来ている。 もしかしたら、思い人が来ているかもしれない。 そんなことを気にし出したら、止まらなくなってしまった。 「・・・本当に、来ているのかしら」 この校舎に。 もしかして気が付いていないだけで、同じ建物にいるのかもしれない。 ダンスパーティのときに知り合いになったとはいえ、アンジェリークは寮暮らしだし、メルローズ女学院のあるリースは、カルディナと少し離れている。 会う機会も、実はあのダンスパーティ以降全くなかったのだ。 「どこかに、いるかもしれないわ・・・」 もういないかもしれない。 しかし、いるかもしれないこの状況で、おとなしく自分の部屋に帰る気にはなれなかった。 「少し、歩いてみましょう」 散歩がてら。 そんな理由を作りながら、アンジェリークはくるりと向きを変えると、歩き出した。 |
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